とらぶる☆とらんすふぁ 第六話


● 6 ●

「ゴメン、広瀬さん待った!? 妹にお使いを頼まれちゃってさ……って、広瀬さん。何してるの?」
 ゼイゼイと息を荒げるお兄ちゃんが部屋に入ってきたのは、私が遥さんの身体に憑依し、私の身体をお兄ちゃんのベッドの下に隠し終わった直後であった。その所為で私こと遥さんは、ベッドの下に頭を入れて、お尻をお兄ちゃんの方に向けている体制を見られてしまったのだ。遥さんがミニスカートなんかを履いてきた所為で、おもいっきりパンツを見せてしまったかもしれない。私は慌ててベッドの下から這い出て、服装の乱れを直しながら申し開きをする。

「あ、あの……ゴメンなさい、春樹さん……。ちょっと暇だったので、春樹さんの部屋を眺めていたら、急に探究心が芽生えてしまい、こんな所まで……。本当に、ゴメンなさい!」

私は遥さんのマネをしながらお兄ちゃんにペコペコ謝った。遥さんとはまだ2回しか会ったことがなかったので、こんな感じで良いのか? と思い、ちょっと冷汗をかいた。

「ははは、別にそこまで謝らなくてもいいよ。オレはてっきりエロ本の隠し場所でも探してるんじゃないかと思ってね。ちょっと焦ったよ」

お兄ちゃんはそう言ってハハハと笑う。私もお兄ちゃんに合わせてフフフと上品に笑った。上品に笑った方が遥さんっぽいからだ。お兄ちゃんはエッチな本が遥さんにバレなくて安堵しているようだけど、私は知っている。お兄ちゃんのエッチな本の隠し場所は勉強机の一番下の引き出しの中だ。するとお兄ちゃんは急に辺りをキョロキョロと見渡し、不思議そうな声でこう言った。

「ところで亜紀がどこに行ったか知らないか? オレにお使いを頼んでおきながら、帰ってきたらどこにもいないんだ」

ギクッ。そんな文字が私の心臓から飛び出す幻影が見えた。そういえばそうだ。私を隠してしまったら、お使いを頼んでも買ってきた物を受け取れないではないか。くぅ、そこまでは考えてなかった……。どうしよう。とりあえず何か言わなければ怪しまれてしまう。

「そ、そういえば、春樹さんに頼み忘れた物があったらしく、私にお留守番を頼んで出て行きました」

「あ、そうだったのか。まったくしょうがないヤツだなぁ」

そう言って私とお兄ちゃんは声を合わせて笑った。ふぅ、なんとか誤魔化すことができたかな? でも、これ以上嘘を重ねると、もう誤魔化しきれなくなるかもしれない。これからの発言には十分気をつけねば……。私はそう心に誓いながら笑顔で誤魔化し続けた。

やっと二人きりになることができた私とお兄ちゃん。始めの内は「春樹さんは普段、どんな音楽を聴くんですか?」などと聞き、お兄ちゃんと遥さんがいつもどんな会話をしているのかを探りながら、楽しく談笑する。しかし、それはあくまでフェイク。本当の目的はお兄ちゃんとエッチなことをすること。私は「この部屋、暑いですね」などと言いながら、上着を脱ぎ、次第に薄着になっていった。時々、シャツの胸元をひっぱって、胸が見えるようにしたり、ミニスカートなのに体育座りをして、お兄ちゃんにパンツが見えるようにした。するとお兄ちゃんは顔を赤くして、あからさまに目を逸らしたりする。私は思わず笑ってしまいそうになった。いつも私には威張っているお兄ちゃんでも、こんなかわいい顔をすることもあるのだということに気付いて、嬉しくなったのだ。私はもっとかわいいお兄ちゃんが見たくなったので、パンツに手をかけて、チラッと一瞬だけアソコを見せてあげた。するとお兄ちゃんはビックリしたようで、一瞬、目を大きく見開いてビクッと震えると、すぐに目を逸らした。はうぅ、かぁいいよぉ〜。テイクアウト! テイクアウトぉ!! 私は某同人ゲームに登場するキャラのような、鼻の下を伸ばしきった顔をして、至福の時を愉しんだ。そして「春樹さん、どうかしましたか?」とわざとらしく聞いてみると、お兄ちゃんは「い、いや、なんでもない……」と顔を真っ赤にして言った。強がっているお兄ちゃんもかぁいいよぉ〜。あれ? 心なしか、さっきよりも前傾姿勢になってませんか? お兄ちゃん。これはもう本人に聞いてみるしかないでしょう。

第七話へ
小説トップへ
戻る