とらぶる☆とらんすふぁ

第五話


          8

「な、な、な、なんで〜!?」

私は『私』を見ながら大声をあげた。
だって私は今、遥さんの身体にいるのだから、『私』の身体は抜け殻になって、ベッドの下にいる筈なのだ。
なのに、どうして……。
私はまた、頭の上がクエスチョンマークでいっぱいになった。
そんな私を見て、『私』はクスクスと笑う。

「他人の身体に憑依できるのは、亜紀ちゃんだけじゃないんですよ?」

『私』は笑いながらそう言った。
他人に憑依できるのは、私だけじゃない?
それってつまり、どういうこと!?
私は少し混乱しながら『私』を見つめた。

「う〜ん、亜紀ちゃんの歳では、まだ知らなくても仕方が無いかな。
 私達のような憑依者はそんなに多くないし……」

憑依者?
なんだろう憑依者って……。
ひょっとして、私みたいに憑依できる人のことだろうか?

「私のこと、まだわかりませんか?」

「そ、そんなこと言われたって……」

「私はよーく覚えてますよ。亜紀ちゃんに頭突きをされたこと」

頭突き!?
最近、私が頭突きをした人は遥さんしかいない……。
と、いうことはひょっとして!

私が驚いた顔をすると、『私』はニンマリと笑った。
お兄ちゃんはまだ「何が起きたのかよくわからない」という顔をして、おろおろしていた。

「は、遥さん!」

私がそう叫ぶと遥さんである『私』がコクリと頷く。
それに続いてお兄ちゃんが「え!? 広瀬さん!?」と素っ頓狂な声をあげた。
どうやら遥さんにも私同様、他人に憑依できる能力があるようだ。
だから、抜け殻になった『私』の身体に憑依できたのだろう。
まさか、こんな身近に憑依できる人がいたなんて。
運命というのはいつだって突然である。

「私が気絶している間に、私の身体を使ってこんなことをしていたなんて……。
 私、ベッドの下で目覚めた時に二人の喘ぎ声を聞いていて、少し嫉妬してしまいました……」

「ひ、広瀬さん。これは……」

「春樹さん、男の人の言い訳はみっともないですよ?」

遥さんはニッコリ微笑みながら、あんなことを言った。
怒りながら言われるのならまだしも、笑顔で言われるのはちょっとキツイ……。

「私達はセックスをしない、という約束を言い出したのは春樹さんの方からでしたよね?
 少しでも私に悪いことをしたと思っているのなら、あの約束を無かったことにしてくれませんか?」

「わ、わかった。無かったことにしよう……」

「あとひとつ。先ほどのお二人のセックスで、私の処女は奪われてしまいました。
 でも、私はロストバージンを体験したことがありません。
 だからこの亜紀ちゃんの身体で、私の処女を奪ってくれませんか?
 私はそれで、先ほどのことを全て水に流します」

「ちょ、ちょっと待ってよ遥さん! 貴女、なんてことを言い出すんですか!?」

「亜紀ちゃん。私の身体を勝手に使って、春樹さんとセックスしたのはどこのどなたかしら?
 それとも亜紀ちゃんが私の処女膜を治してくれるの?」

遥さんの目が「S・E・X! S・E・X!」というシュプレヒコールをしているかのように見える。
うぅ……。
そこを突かれると私はグゥの音もでないよ……。
あっ、でも待てよ?
確かお兄ちゃんとの初体験の時は、全く痛くなかったし、血も出なかった。
だからあの時は「遥さんは非処女」なんだと結論付けたんだった。

「でも待って! さっき遥さんの身体でお兄ちゃんとセックスしたけど、
 血も出なかったし、全然痛くなかったよ!?
 それでも遥さんは自分が処女だと言い張るつもりですか!?」

「あのね、亜紀ちゃん。一般的には『初体験は痛い』ということになっているけど、
 世の中には処女でも痛くないし、出血もしない人だっているのよ?
 私、生理の時はナプキンじゃなくて、タンポンを使ってるから、その所為じゃないかしら?」

確かにタンポンは膣に挿入するタイプの生理用品の為、
日頃から使っていると異物感に慣れてくるし、処女膜も柔軟になるという。
でも、これを認めてしまうと本当の私の処女は遥さんに奪われてしまうし、
なによりも私のお兄ちゃんと遥さんがセックスをしてしまう……。
そんなこと、私の目が黒いうちには絶対に認めないよっ!

「まぁ、亜紀ちゃんや春樹さんが拒否しても、
 私が亜紀ちゃんと同じ手を使えば、いとも簡単に実現できそうですけどね……」

「な、なんですって!? 私達を脅すつもり!?」

「目には目を、歯には歯を、です♪」

「亜紀……。オレ達の負けだ。降参しよう……」

「うぅ……。うぅ〜〜っ」

私は悔しくて、泣きながら歯軋りをした。
でもまぁ、最初に悪いことをしたのはこの私なんだし、
同じ目に遭うのは仕方の無いことなのかもしれない……。
そう思った私は不承不承、首を縦に振った。

「約束しましたね。二人とも。私の処女を奪った責任、とってもらいますからね」

遥さんはそう言って、不敵に笑った。


          9


「あっ、お兄ちゃん! 遥さんばっかりズルイ!
 私も! 私のおまんこにも、ズボズボしてよぉ!」

「よし、わかった。望み通り、ズボズボしてやるぞ」

「ちょっと、遥さん! 『私』の身体で、私のマネしないでよぉ!」

「え? 今日も入れ替わってたのか? お前達!?」

「ううん、そんなことないよ。
 きっと遥さんがお兄ちゃんのおちんちんを私に取られるのがイヤだから、
 私のマネをしているだけだよ」

「お兄ちゃん! 遥さんに騙されちゃダメだよ! 本当の私はこっちなんだから。
 お兄ちゃんならどっちが本当の亜紀か、わかるでしょ?」



あの日から私達三人は、毎日のように3Pセックスをするようになった。
あの後、私の身体に憑依した遥さんとお兄ちゃんがセックスを始めてしまったので
(あれって近親相姦になるのかな?)、私は喘ぎ乱れる二人を眺めながら、
一人寂しくオナニーしていると、やっぱりお兄ちゃんのおちんちんが恋しくなってきちゃって、
お兄ちゃんのアナルを舌で愛撫しながら「私も仲間に入れて」と言ってしまったのがことの始まりだった。
この結果を招いたのは、全て私の所為だから仕方が無いんだけど、
慣れてみると3Pは楽しくて、気持ち良かった。
遥さんは清楚そうな顔をしているけど、いざエッチが始まると、
私よりも数倍淫乱でセックスの知識はこの三人の中で一番豊富だった。
やっぱり、人柄と言うのは外見だけでは判断できないものである。

「ええい! 静まれ! お前達!
 このまま喧嘩を続けるようなら、今日はしてやらないぞ!
 オレだって毎日二人も相手をして、疲れてるんだからな!」

「え!? そんなのヤダよぉ!」

「仲良くしますから! お願いします!」

「よし。それなら二人とも元の身体に戻ってから、仲直りの印にキスをしろ。
 思いっきりディープなヤツを、だ」

「ええ〜!!」

「それはちょっとぉ……」

「なら今日のチンポはお預けだ」

「や、やります! やりますからそれだけは……」

「ほら、遥さん! チューしましょ! ちゅーっ」

私と遥さんはお兄ちゃんに命じられた通り、
おでこにキスをして元の身体に戻った後、ディープで濃厚なキスを交した。
お兄ちゃんはそれを見て興奮したのか、いつもより大きく勃起させていた。

「ああんっ、春樹さん! おしりぃ、おしりがいいのぉ! 今日はおしりを開発してぇ!!」

「お兄ちゃん! 私も! 私もおしりで気持ち良くなりたいよぉ!
 私の穴の方が小さいから、締りの良さなら遥さんに負けないよ!」

「さっきは遥からだったから、今回は亜紀の番だ」

「やったぁ!」

「仕方が無いですね。それなら私は亜紀ちゃんの勃起しきったやらしい乳首を責めて、
 早く私の番になるように努力します」

ついこの前、セックスを始めたばかりの私達だけど、
遥さんの豊富な知識と、毎日の3Pのおかげで、私達はすっかりエッチになってしまった。
こんなにエッチになってしまっても良かったのだろうか?

「亜紀の……キツキツで……スゴイ……」

「ああっ、ああああんっ、いいよぉ!
 お兄ちゃんのおちんちんが、私の中でビクビクしてるのぉ! おしり、おしりいいよぉ!」

「ああ、春樹さんと亜紀ちゃんの結合部があんなに濡れちゃって、すごくやらしい……。
 亜紀ちゃん、早く代わって! 私も春樹さんに突いてもらいたいのぉ!」

「ひゃんっ! おっぱい噛んだらダメだよぉ! 感じすぎちゃうぅ!」

私は以前、自分に『憑依』という能力があることを呪った。
しかし、この能力があったからこそ、今の私達がある。
こんなに気持ちいいことが出来るのなら、『憑依』という能力も、
悪くはないのかもしれないと思いながら、今日も三人でセックスを愉しんだ。


END

イラスト:弐肆
文章:ATF

(2006年1月14日)


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