とらぶる☆とらんすふぁ 第三話


● 3 ●

あの時のことを思い出すと今でもムカムカする。なにしろお兄ちゃんに彼女がいたなんて初耳だったのだ。まさに寝耳に水。まるでお兄ちゃんに裏切られたような気分になって、あの日は泣きながら眠った。でも、私はあることに気付いて、すぐに立ち直った。それはもちろん、あの不思議な能力のことだ。

あの他人に憑依できる能力を使えば、どんな人間でも私の意のままに動かせる。それが例え遥さんであっても、だ。もし、私が遥さんだったら、私はお兄ちゃんの彼女になれる。お兄ちゃんの彼女になったら、毎日のようにベタベタしたり、甘えたり、時にはワガママも言えたりするし、キスだってし放題。それに、それ以上のことだって……。いい。このアイディアは凄く良い。遥さんに憑依すれば、血縁関係というどうすることもできない問題も解決してしまう。まさに願ったり叶ったりではないか。何故、もっと早くこのことに気付かなかったのかと、私は一人で昔の愚かな自分を呪った。

よし、遥さんに憑依しよう。そう決意した私は自室の机に向かい『遥さん憑依計画書』を一気に書き上げた。そしてその後、近所のドラッグストアへ行き、『ドリームL』という睡眠薬を買った。

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